簿記3級を学習した方にわかりやすく経理の仕事について紹介します。
実務経験のない人が経理職へのキャリアチェンジを狙っている方は是非ご参考にして下さい。
以前ご紹介した「経理業務一覧表」で経理業務を4区分16業務に分類しました。
今回は「決算仕訳」についてご説明します。
1. 現預金や売掛金・買掛金・未払金が絡まないその他の仕訳
現預金や売掛金・買掛金・未払金は取引量が多く、残高を綿密にチェックする科目なのでこれらに絡む取引は計上漏れが自動的に防げる要素が強いです。
これに対して上記様な主要要素が絡まない取引は計上漏れを防ぐために大抵はチェックリストを作成したり会計ソフトに事前登録(予約登録)などを行っています。
タイトルには「決算仕訳」としていますが、決算特有の定常的なものだけでなく労働保険料の精算仕訳の様に年1回行う仕訳があったり臨時取引があったり様々です。
今回は簿記でおなじみの決算仕訳を中心に実務でも行っていることをお伝えします。
2. 収益・費用の見越・繰延の戻入と計上
見越は「未収収益」「未払費用」の計上、繰延は「前受収益」「前払費用」を計上しますね。
前期に計上したものは戻入処理がありますので「戻入」と「計上」をセットで仕訳を入力するのが一般的です。
大抵の項目が次の決算時に同額を戻入れることになるので予約登録してしまうケースもあるかもしれませんね。
家賃・リース料・給料・社会保険料などがありますね。
20日〆月末払いの給料の支払いルールなどでは21日~月末の未払給料の計上が発生すると面倒なので私は月末〆の会社が好きです。
3. 棚卸しの戻入と計上
日商簿記では商品販売をする会社の簿記を最初に習いますので商品の棚卸し処理はおなじみですね。
前期末に計上した棚卸しを戻入れして当期末の在庫を棚卸し計上します。
実地棚卸しで数量を確定して先入れ先出し法・最終仕入原価法といった単価を採用して棚卸し額を計算します。
製造業・建設業・プロジェクト会計を採用している会社なら製品や仕掛品も計上することになります。
原価計算をしていると期末で計上するというより、未完成の原価を仕掛品勘定で集計して完成したら完成原価に振り替えることが多いので期末に計上というよりは完成と売上計上のタイミングが重要になってきます。
他にも消耗品等も棚卸しします。
大量に購入している事務用品(例えば社用封筒等)とか切手類等を棚卸し計上します。
4. 減価償却費の計上
減価償却費の計上は一般的に減価償却計算ソフトの計算結果を仕訳する形となります。
計算結果を手入力する場合もありますし会計ソフトに自動連携するケースもありますね。
減価償却費の計上は自分で計算することはほとんどありません。
資産計上時に証憑書類に基づいて必要な計算要素を正確にデータ入力することが大切になります。
そうすれば日常処理は機械的に処理するだけです。
減価償却費は部門別に管理することが多いので資産の数の割に仕訳が多くて煩雑になったりします。
長期前払費用の取り崩し仕訳なども減価償却計算ソフトを利用して漏れなく処理する会社もあります。
減価償却を計上したら帳簿残高が計算ソフトの理論値の残高と一致しているかも必ず確認します。
自社が直接法なのか間接法を採用しているかによって残高のチェック方法が変わってきます。
5. 引当金の戻入と計上
引当金はその金額を計算するのが減価償却費ほど一律ではないので事前の集計作業が必要となったりします。
賞与の額の確定に時間がかかって人事部門からなかなか数字がもらえない、なんてこともあったりして。
「賞与引当金」「退職給付引当金」「貸倒引当金」「修繕引当金」「製品保証引当金」等の引当金を計上します。
戻入がある場合と取り崩しがタイミングが支給時の場合と2通りあります。
パターンを覚えてこれらも機械的に処理できるようになるとスムーズです。
6. 資本取引
会社を売り買いしたり頻繁に行わない会社だと資本取引はさほど多くはありませんが、利益処分は忘れずに行います。
決算チェックリスト等を用いていれば利益処分処理を入れておくと良いでしょう。
7. 税効果会計
税効果会計を採用している会社では決算ごとに税効果にかかる仕訳を入力します。
こちらも戻入がセットで発生しますので定型的に処理します。
8. 決算仕訳を計上する頻度
私は会計事務所時代は比較的小さな会社の経理処理を見ていましたし、規模は大きいけど上場してない会社、規模は小さいけど上場企業の連結会社で四半期決算をして監査法人の監査を受ける会社、いろいろ経験してきました。
決算仕訳は会社の形態、規模、対象となる取引の金額の大小によって計上を簡略化するかどうかが異なります。
月次決算は簡単に年次決算だけ厳密処理する会社、四半期決算の時には厳密にする会社、月次決算からかなり細かな決算仕訳をする会社・項目、いろいろです。
規模が小さく非上場の会社では会計ルールはかなり税法に寄っていることが多く、ある意味「税法さえ守っておけば良い」という考え方があります。
法人税等の所得を基礎とする税務申告は年1回しかないので家賃の見越し・繰延のように毎月同額となるようなものは年に1回しかやらないことが多いです。
月次でやってもやらなくても結果が同じですからね。
税法で損金に落ちない貸倒引当金なども計上しないことが多かったりします。
簿記でもおなじみの決算仕訳ですが、実務では如何に機械的に処理できるかが勝負ですかね。
会社によっては数値が固まってから処理できる時間が限られる項目もあるのでやきもきすることも多く、そのために決算期に残業や休日出勤の嵐になったりもします。
次は「決算確定」について解説します。
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