簿記3級からの経理の仕事「社内規則の整備」

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経理部門での社内規則の整備について教えて下さい
経理部門では網羅的に法律に準拠した規則の整備が必要です。
経理の専門知識だけでなく企画力や会社全体を主導する牽引力や調整力も必要となります。

上記の記事では経理業務を網羅的に一覧にしていますが、今回は社内規則の整備についてご紹介します。

企業の管理部門は大抵は部門に関係した社内規則の主管部門として規則を担当しています。
経理部門では会計に関する規則を起案・維持・管理する役割を担っています。

1. 経理関連規則

経理部門が管轄する経理関連規則といったらどんなものがあるでしょうか?

  • 経理規程
  • 勘定科目規程
  • 原価計算規程
  • 固定資産管理規程
  • 販売管理規程
  • 在庫管理規程
  • 予算管理規程
  • 与信管理規程

会社によってどの様な規則を整備するかは異なりますし、規程の階層や構成は様々です。

例えば、「経理規定」を最上位規程として「勘定科目細則」や「固定資産管理細則」等を下位規程とする様な構造とするパターンです。

規程類は従業員がどの様なルールに基づいて業務を行うか、責任者、従事できる従業員や部門の特定等を行います。

規則無きまま行えば、担当が変わるごとに継続性もなく異なる経理基準に基づいて業務を行うことになります。
この点についは経理に限らず他の業務でも同様ではあります。
しかしながら経理業務は日常の様々な取引を記録していき、その積み重ねで決算書や税務申告書を作成することが主要業務となっています。
これらは税法や会計法規に規定されていることから特に規程の重要性は大きいと言えます。

また、日々の取引の記録の基となるのは専門的に従事している経理部門の担当者だけでなく一般社員にもそのルールに則って処理を要求する局面も多いです。
その時の拠り所としての規則の存在は重要でもあります。
特に経理の要求は一般社員からすると非常に「細かく」思われがちです。
面倒なルールを守ってもらうにはきちんと明文化して「経理が言っているから」ではなく「会社の規則である」という体制構築のためにも、ある程度の従業員がいる規模の会社では奇蹄類の整備は必要となってきます。

また経理部門は資金管理を任されており不正に直結しやすい領域を扱う部門である点では不正が起きにくい仕組みを構築する責任も負っています。
内部統制が機能するように規則を有効性のあるものにすることが重要です。

この様に規則類を整備することは経理部門の重要な業務となります。

業務マニュアルと決定的に違うのは「何をすべきか」「何をしてはいけないか」というルールであり、規程を読んだからと言って初心者が仕事に出来るようになる訳ではありません。
その点を念頭に置きながら法律や会計法規の遵守、内部統制が機能するように規則類の整備をしていきます。

このため関連法令を網羅的に理解しておく必要があります。

2. J-SOX

J-SOXとは「内部統制報告制度」ですが、もともとはアメリカで巨大企業での不祥事が続いたことなどを受けて始まった「SOX法」という内部統制の制度がその起源となっています。
SOXの日本版という位置づけで導入されたことから「J-SOX」というわけです。

内部統制報告制度の基では、上場企業が事業年度ごとに監査法人の監査を受けた「内部統制報告書」を有価証券報告書と合わせて提出する必要があります。

上場企業が投資家や株主に提供する財務諸表が「信頼に足る」情報として統制のとれた業務基盤に基づいて作成されていることを担保することがその目的です。
経理関連規則類が適正整備され、それがきちんと運用されていることを定期的に監査することも大切な要素ですが、J-SOXが対象する領域はそれだけではありません。
財務諸表作成に影響するシステムがきちんと統制されたものになっているか、と言った財務諸表作成のインフラにも報告対象としており多岐にわたる項目について網羅しなければなりません。
ですからシステム部門や人事部門、企画部門等他部門との連携をしつつ経理部門が主導して基盤構築をする必要があります。

米国旗

3. IFARS

IFRS(アイファース、イファース)とは、ロンドン発の国際会計基準です。
「世界共通の会計基準」を目指してEUでは上場企業に適用義務化され100ヶ国以上で採用され、日本でも2015年にIFRSを上場企業に強制適用する予定でした。
しかし日本がそれまで国際会計基準として寄せてきたアメリカがIFRSに積極的で無かったことや震災の影響などで延期された後、強制適用が見送りになり、その後も強制適用時期について正式に論じられることが無くなり現在に至っています。
一時期、目前に迫った強制適用を踏まえて一気にIFRS熱が盛り上がっていましたが、現在はあまり巷で聞かなくなった言葉となりました。
しかしながら、将来の強制適用を見据えて既に対応済の企業も増えています。

それまで米国基準をお手本にしてきた(させられてきた)日本にとってはIFRSは少し異質かもしれません。

3-1. IFARSの特徴

1. 原則主義

細かい規定類や数値化された基準よりも原則に則って解釈の自由度が高いことが特徴の一つです。
逆に会社がどの様な解釈をしてどの様な根拠に基づいて採用した会計基準なのかを会社自身が示す必要があります。
米国の流れを汲む日本の会計基準はIFRSが導入されると、会計理論の解釈や実務指針は大きく転換することが予想されます。

2. 貸借対照表重視

IFRSでは企業評価の重視する情報は「将来キャッシュフローの現在価値」、簡単に言えば貸借対照表の情報の様に「資産価値」となります。
日本では過去、商法では債権者保護の観点で貸借対照表重視でしたが、その後投資家保護の観点が強まり期間利益に重点が移り、損益計算書重視で現在に至っています。
この点でもIFRSにより日本の重視する考え方にも転換点が予想されます。

3. グローバル基準

国による独自性を考慮せず、基準に関わる議論や定義も英語のみとして言語による認識のずれを防ぐ、といった考え方で貫かれています。
日本語で日本の税制等を前提として考えてきた日本の会計の世界は大きくグローバルな世界に突入します。

今のところIFRS基準への移行がどの様なタイミングでどの様なスピードで進むのかははっきりわかりませんが、移行すると大きな転換点を迎えることとなるので会計人として長く働こうと思っている方はその動向を注視しておく必要があるでしょう。
普段から英文会計に慣れている経理マンはIFRSが当たり前の世界になったら優位性が大きくなるかもしれませんね。

EUとイギリス国旗

4. 規則のメンテナンスと監査

規則類は単純に社内の業務基盤のため、というだけでなく、その規則類の整備状況や運用状況を外部から評価されるという点が局面があるということです。
社内の経理の専門部署だけでなく「従業員に分かりやすい規定である」ことも大切ですし、外部からの評価に耐えうるだけの水準の規則の整備と運用を維持できる能力が企業に求められると言えます。

これらの土台ややはり法律や会計基準に詳しい経理部門の人たちが主体になるしかなく、そしてその適正な運用には単純に専門性だけでなく他部署を巻き込んで全社的な取り組みへ持ち込める様な企画力・調整力・牽引力等も求められることでしょう。

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