簿記3級からの経理の仕事「資金管理と資金調達」

円マークのコインを浮かしたサラリーマンの右腕
資金繰りとはどんな業務なのでしょうか?
資金繰りとは将来の資金の出入りと残高を予測して事業が継続できるように資金を管理・把握する仕事です。

資金繰りは事業を継続させるため非常に重要な財務領域の業務です。

自社の取引の特徴を理解して資金の動きを把握する仕組みを構築し、予算の信頼性・確度も加味して、必要に応じて過不足なく資金手当てをする必要があり、スキルと決断力を要する経験値が高くないと出来ない業務と言えます。

エクセルで簡潔に作成できて信頼性の高い資金繰り予定表が作成出来るようになることは財務領域で大きなスキルと言えるでしょう。

以下の記事で経理の仕事について分類してきました。

本日は企業活動の血液とも言える資金の管理をする生命線を握っているような資金繰りについてお伝えします。

1. 資金繰り

資金繰りとは

資金繰りとは一言でいえば、資金管理のことです。
資金の残高・支払い予定・入金予定を把握して、不足が見込まれるならその手当を準備できるようにすることです。

最も重要なことは近い未来を予測して「資金不足による事業に支障を来たさないようにする事」です。

資金繰り予定表の作成

資金繰り予定表は複式簿記の様に決まった型がないとも言えます。

法律に定められた方法に沿った方法でやる義務もなく、目的は自社の資金の残高と流れを把握して将来の資金がきちんと使える状態にしておくことです。

予算作成と仕訳を資金繰りに合わせて作成すれば会計ソフトで資金繰り予定表も作成出来ないこともありませんが、少し難易度が高いです。

ですから通常は試算表を出発点として資金繰り特有の計算式を組み込んだエクセルで自社に合った資金繰り予定表を作るのが手っ取り早いです。

確定した現預金残高をスタートとして翌月の現預金収入と現預金支出の予測値を計算して翌月の現預金残高を計算します。

また翌月までですと資金手当てが必要な時に準備に時間がないので3ヶ月程度の未来まで計算したりします。

現預金の収入、支出は損益計算書の収益や費用とは一致しません。

収入なら売掛金としていったん債権となったものが1ヶ月とか2ヶ月とか売掛金の回収サイトに基づいて現預金に収入となりますし、仕入や経費は買掛金や未払金としていったん債務となったものが1ヶ月とか2ヶ月とか支払い約定に基づいて現預金支出となるからです。

売上収入、仕入支出は以下の様に計算されます。

    〔資金繰り予定表の数値計算の例〕

  • 「翌月売上(見込み)収入」=「PL予算の翌月売上高」+「BS当月売掛金残高」-「BS翌月売掛金残高見込み高」
  • 「翌月仕入(見込み)支出」=「PL予算の翌月仕入高」+「BS当月買掛金残高」-「BS翌月買掛金残高見込み高」

資金繰りの基礎はPLの予算です。
PLの予算はどこの会社でも作成していると思います。

PLの予算に売掛金・買掛金等の介入により現金主義ではない項目を調整することにより算出することが基本です。

売上や仕入だけでなく営業外収入や一般経費や見込まれる臨時的な損失も加味します。

ただ資金繰りはPLに伴う現預金の動きだけでなくBS項目の現預金の動きも把握する必要があります。

例えば、借入金の入金や返済、固定資産の購入等、PLに表現されない項目を加味します。

逆にPL項目を全て反映するわけでもありません。

例えば、減価償却費の計上額や引当金の繰入額のように現預金の支出を伴わない費用は除外します。

また税金の支払いなども加味します。

会社によってこれらの動きを追う項目は異なりますので、自社に合った調整方法をエクセルの計算式に組み込んでいきます。

通常のPLのみの予算作成や仕訳の計上よりは自社の取引や財務状況をより把握している必要があるのが資金繰り予定表の作成となります。

また予定表は「未来の数値」を「予測」することになりますので、予算値がどの様な数値なのかによって資金繰り予定表の値に反映されます。

例えば、予算と言いながら「目標」みたいな数値で運用されていて、毎月予算を下回ってばかりいるような会社の場合、この予算値を未来の予測値として利用した資金繰り予定表も非常にリスクの高い数値となってしまいます。

資金繰り実績表の作成

資金繰り実績表は予定ではなく試算表と同様に「過去の数値」を実績値として計算するものです。

前月見込んだ「資金の予測値」である資金繰り予定表と実績がどの程度差異があったのかを検証しておく必要があります。

資金繰り予定表のような「予測値」ではないのである意味「ルールに基づいて機械的に数値を集計する」だけです。

    〔資金繰り実績表の数値計算の例〕

  • 「当月売上収入」=「PL当月売上高」+「BS前月売掛金残高」-「BS当月売掛金残高」
  • 「当月仕入支出」=「PL当月仕入高」+「BS前月買掛金残高」-「BS当月買掛金残高」

こちらも売上・仕入だけでなく営業外収益に関する収入、費用・損失に関する支出、借入金の入金や返済、固定資産の購入等、PLに表現されない項目を加味して、税金の支払いなども反映しつつ、減価償却費等の現預金の収支の伴いPL項目は反映しない様にします。

キャッシュフロー計算書との違いについて

キャッシュフロー計算書とは資金の入金・出金を営業キャッシュフロー/投資キャッシュフロー/財務キャッシュフローの区分に分けて表した財務諸表です。

企業がどの様な活動で資金を得て、どの様な活動で資金を使っているかの流れがわかるものです。

作り方は「当期純利益から調整項目を加減して作成」する「間接法」という方法が一般的です。

資金繰り実績表と大きく異なるわけではないと言えます。

ただ、資金繰りは実績値よりも未来を予測する「予定表」が重要です。

キャッシュフロー計算書を予測値と絡めて作成するのは作成手順が複雑となります。
未来予測がしやすい資金繰り予定表を作成する方が実務的です。

2. 資金調達

資金調達の方法としては「借入金の調達」「社債の発行」「新株の発行」等があります。
大きな新規事業をスタートする、事業規模を大きくする、多額の設備投資をする、資金繰りで不足した運転資金を調達する、といった局面で資金調達することになります。

借入金の調達

銀行に申込み借入金を調達するのが一般的です。
どの銀行から、どの様な条件で借り入れるのかを決めて申込をします。
しかしながら銀行はどんな企業にも常にベストな条件で融資をしてくれるわけではありません。
リスクが高い貸付先とみなされたら条件どころか融資を受けることすら出来ない場合もあります。
このため、企業は毎期安定した利益を計上して金融機関から優良な貸付先であると見てもらえるような努力をする必要があります。

融資には主に2つの借入パターンがあります。

    借入金の主な借入パターン

  1. 【証書借入】数年の返済期間を設けて住宅ローンの様に月々元利合わせて少しずつ返済していく方法
  2. 【手形借入】借入時に返済予定期間までの金利合計を差し引いた金額を受け取り、返済日に一括して元金を返済する方法

社債の発行

社債は金融機関に限らない投資家等から広く借入金を募集する方法です。
企業価値・信用度が高ければ金融機関から借りるよりも好条件の金利で融資を受けることが出来ます。
また返済は満期償還日にすれば良く利払い日に利息のみ支払えば良く長期的に安定した資金手当てが可能となります。
株式の発行と異なり経営に口出しされる気遣いもない点もメリットとなります。

新株の発行

新株の発行は返済の必要のない資金を手に入れることができるので長期的な事業投資をするような時には調達方法としてメリットがあります。
しかしながら経営への関与の影響があること、配当金として利益を還元する必要があります。

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