体系的に業務内容を知ることがキャリアプラン設計には重要になってきます。
経理を目指す未経験者にとっては経理という仕事を良く知りたいところですよね。
あなたが見聞きしている経理の仕事はほんの一握りだと思います。
いざ「その仕事に就いてみようかな?」と思っても漠然としたイメージしか沸かないあなたに分かりやすく経理の仕事を解説します。
税理士事務所、事業会社の経理課長・経理部長、連結決算のグループ企業の責任者等を経験して割と幅広く経験してきましたので、「色々なパターンの経理の仕事」についてナマの声をお伝えできるかと思っています。
今後のキャリアプランを立てていくにはまずはその対象を良く知ることが必要かと思います。
是非お役立て下さい。
1. 経理にはどんな仕事があるのか?未経験でもできるかな?
経理には様々な仕事があります。主だったものを簡単に挙げてみましょう。
お金の出し入れを一手に引き受ける
(取引の記録と保存)
会計ソフトへの入力・チェックや資料の保存
(決算書の作成)
取引をチェックしつつ各種計算をして集計値を確定して各種帳票にまとめる
(公表)
投資家への開示や株主総会での説明
(分析)
予算実績管理・経営幹部への報告
(調達・運用)
銀行から借入、資本家から資本金を集める、投資で余剰資金を運用する
(税務申告と納税)
税金を計算して納める
イメージは沸きましたでしょうか?
網羅的に確認したい方は以下の記事をご参考にしてみて下さい。
⇒簿記3級からの経理の仕事「営業取引の記録」
⇒簿記3級からの経理の仕事「決算仕訳の計上」
⇒簿記3級からの経理の仕事「決算確定」
経理と言っても簡単な仕事からかなり難易度の高い仕事まで幅広い領域があります。
例えば、私は税理士事務所に職員として採用されたときクライアント企業が持ってきた山のような領収書を日付順に並べ替えてひたすら糊で紙に貼る、なんて仕事をしました。
また預かった資料をひたすらコピーするなんてのも。
これも税理士事務所の仕事と言えば仕事です。
一般企業の経理部門なら証憑と呼ばれる膨大な紙資料のファイリングも経理の仕事です。
この様な仕事はやり方さえ教わればその日から従事することも可能です。
逆に銀行に資金調達のために会社の業績や将来性を数値で示して説明する仕事や株主総会で会社業績や赤字要因とその対策を数字面から説明する、なんて仕事は経験の浅い経理マンでは務まりません。
ここでは、かなり幅広い業務があり、難易度も異なる仕事が沢山ある、ということをご理解頂ければ良いかと思います。
2. 未経験者が意識したい「会社によって異なる経理部門の仕事」
- 会社の規模や上場・非上場によって異なる
- 会社の業種や業態によって経理処理の難易度・専門性が上下する
- 会社の組織形態によって隣接業務が経理部門の仕事であったり、なかったりする
こういうことを理解していると転職時のミスマッチの回避に役立ちますし、キャリアプランの立て方も現実味を帯びたものになり易くなります。
では一つずつ見ていきましょう。
3. 会社の規模や上場・非上場で異なる経理の仕事
例えば株式上場していない企業では外部への開示というものは極めて限定的です。
公告というのは簡易的な決算書を自社の公式サイトに掲載する程度で済ませてしまいます。
これに対して上場企業は監査法人の監査を受けJ-SOXへの対応もして期限までに決算短信・有価証券報告書といった膨大な開示資料を作成することになります。
自社の決算、いわゆる単体決算だけでなく子会社や関係会社があれば連結決算もしなければならずグループ企業のまとめ役もしなければなりません。
上場していなくとも大企業となれば関係者は多く取引も様々でそれだけ経理処理のパターンも増えていき覚えるべき領域は増えていきます。
外国との取引が無ければ外貨建ての処理を覚える必要もありませんし、為替予約をしたり英文の各種書類を読む必要もほとんどないかもしれません。
また投資活動の旺盛な企業なら各種デリバティブ取引等の特殊な会計処理を要求されます。
また企業規模が大きくなると法律の要請から税効果会計や減損処理・資産除去債務の見積、年金数理計算等、簡便な経理処理が認められず難解な経理処理ルールに基づく計算が求められます。
上場企業の子会社や関係会社等連結決算対象企業は別として通常は規模に比例して経理処理が複雑で高度な知識を要求される傾向にあります。
4. 会社の業種や業態によって経理処理の難易度・専門性が上下する
小売業や卸売業のようにモノを販売する業種は比較的経理処理も分かりやすいですが、主に「原価計算」をする必要がある企業は経理業務の難易度や専門性が増します。
製造業はモノを仕入れてそのまま売るのと異なるため、製造したものが売れた時、その原価がいくらか?という計算がかなり細かく煩雑な計算を伴います。
また部品や材料のように物理的なものだけでなく原価は人件費もあり、誰がどの程度のその製造に携わったか、といったことまで計算を求められます。
ソフトウェア開発・販売等をしている会社やプロジェクトが数ヶ月以上に渡るような業種、建設業などにも製造業ほど複雑ではありませんが原価計算が伴います。
5. 会社の組織形態によって異なる経理部門の担当業務
経理業務を管轄する部署って会社によって呼び名や担当業務も様々です。
例えば、総務業務と経理業務を担当する部門を「管理部」とか「業務部」と呼ぶ会社もあれば、経理と財務の仕事を「経理財務部」と読んでいる会社もあります。また「予算実績管理」は企画部がそれ以外の経理領域は「経理部」が担当といった企業もあるでしょう。「資産管理」は総務部がやる会社もあれば給与計算や年末調整を人事部ではなく経理部が行う会社もあります。
おおむね企業規模が大きくなるほど組織は細分化される傾向にありますが、部門ごとの線引きは会社ごとに異なります。
6. 自分たちだけがプロになればいいわけではないのが経理マン
経理は税法や証券取引法・会計諸規則など、税務署や監査法人が納得いくようなルールを定めて、そのルール通りに処理しなければなりません。経理業務に携わる計算のプロだけでなく一般社員にもそのルールを指導して正しく運用していくなど、ただコツコツやるだけでなく会社全体が会計的なルールを守れる環境を維持していくようなスキルも求められます。実は真面目でコツコツとスキルを積み上げながらもこういった領域でブレークスルーできずにいる経理マンも意外に多いのです。
7. 未経験者が狙う領域、外す領域
将来的なキャリアプランを練る分には大志を持って目指すべき担当業務に狙いを定めるのは良いと思います。しかしながらまずは転職先として検討するならやはり初心者でも入り込めそうな領域を狙っていくべきでしょう。転職でステップアップを狙うにしても就職先で経験を積んで高みまで昇り詰めるとしてもまずは未経験者から「経理経験者」になることを優先することが大切です。
従って未経験者でも就きやすい「狙った業務」が応募企業の部署にあることを確認する必要があります。
いきなりは無理だよなぁ、という領域は避けましょう。
また大企業、特に上場企業は避けたい未経験者は避けた方が無難です。高度なスキルを要するため転職難易度が高いこともありますが、完全に分業化されている場合も多く仮に手頃と感じた業務を主担当に入社出来てその後努力してもキャリアを積んでもその途中に大きな壁がありキャリアアップを阻まれるケースがあります。入社時の入り口が異なると壁をこじ開けるのが容易ではなく単純作業に近いところで足踏みしてしまう可能性があります。
私がお勧めするのは中規模から中小企業で探してみることをお勧めします。どうしてものちのキャリアプランや収入等を優先して大企業をあたってダメなら、だんだんと規模を下げて、といった発想で転職活動を始めがちです。しかしながらキャリアプランを立てていく段階から企業規模の小さい企業からスタートする方がキャリアチェンジがスムーズに行くケースが圧倒的に多いと思います。
私は職員3人の税理士事務所から会計人としての道を歩み始めました。
また事業会社で経理マン採用を何度もしてきて私が感じることは経験値の低い人ほど経理専門部署へのこだわりが強いということです。経理としてのキャリアを積みたい一心で経理以外の業務をしなければならない可能性をあらかじめ排除したい、みたいな心理が働くのか部署の名前も「経理部」とか「経理財務部」とかにこだわったりするような印象を持ちます。
私は部下を育ててきた経験からもこう感じます。それは「ある程度、周辺業務もすることも勉強の一つ」といった気持ちでどんな仕事も前向きに取り組む人の方が結局は専門分野の吸収も早く、回り道のようで経理のキャリアアップを着実にこなしていける人材に育つことが多いように思います。
ですからあまり「経理以外の業務も管轄する部署はいや」とか思わずに対象に加えてみたら良いと思います。
具体的に「こんな業務が狙い目」というのは今まで積んできたキャリアを基に検討するのが良いと思います。いずれ「キャリア別の転職戦略」の記事もアップ予定ですのでその時にお伝えできればと考えておりますのでお待ち下さい。
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