簿記3級からの経理の仕事「決算確定」

PCに取り込まれるデータとグラフ
「決算を確定する」って具体的にはどういう仕事?
決算を確定するには一定期間の帳簿を締め切り社内手続きを経ることになります。
そして決算書を作成して決算書を社内外に提供して会社の財政状態・経営状態を公表します。

日次決算を取り入れている会社もありますが、一般的なのは「月次決算」を最小単位として「年次決算」として事業年度を締め切り会社の経営成績や財務状況を把握して配当可能利益を計算したり、税額計算を行います。
上場企業を中心に報告義務があることから「四半期決算」を行う会社もあります。

決算確定の具体的な内容を見ていきましょう。

1. 試算表の確定

企業は月次決算を最小単位として月初の数日内に前月の取引全てを会計システムに仕訳の形で入力を完了して試算表の確定をさせます。
しかしただ単に個別の取引を証憑書と照らして正しい処理をしても計上漏れや整合性のチェックは十分とは言えません。

BS科目の勘定科目別・補助科目別残高チェック

BS科目なら当月に発生した増減が正しいのか、補助科目が間違っていてマイナス残高になっていたり本来数字が毎月定額の発生があるはずの科目が全く動いていない等をチェックしていきます。

例えば「預り金勘定」を補助科目別管理している場合に「給与源泉所得税」という補助科目の動きを確認してみます。

給料は毎月支払いますので給料に対する源泉所得税は毎月発生するはずです。
発生した源泉所得税は貸方に数値が入ります。
また源泉所得税を毎月納付している会社ならその納付が借方数値の増加として表れているはずです。
これらをきちんとした確認すべき確実な資料と突き合わせすることが大切です。

  • 当月借方残高⇒源泉所得税納付書の給与分の納付額と一致しているかを確認
  • 当月貸方残高⇒給与台帳の源泉所得税預かり額の全社員合計と一致しているかを確認

給与関連データは給与計算システムから自動連携されている場合にはこれらのチェックを省略することもあるかもしれませんが、こんな見方をすることもあります。

  • 前月残高と同額が借方に計上されており、前月計上された源泉所得税が全額きちんと納付されているか?
  • 給料は毎月大きく変動しないので当月計上額(貸方合計額)と前月残高に激しい金額の乖離が無いか?
  • 大きく乖離しているのは賞与支給月だから問題ない!

それぞれの勘定科目別・内訳科目別に見るべき観点は違ってきます。
会社の特色と勘定科目特有の動きを知っていると誤った計上の見つけ方も効率良く行えるようになります。

賞与引当金の計上ルールを知っていれば、
「賞与支給月から数えて3ヶ月目なら当月計上額の3倍の残高になるはずだ」
と言ったチェックの仕方ができるようになります。

PL科目の勘定科目別・補助科目別残高チェック

PL科目はBS科目と異なり増減を繰り返すというよりは毎月金額が積み重なっていきます。
ですから「勘定科目ごとに急激な増減になっていないか?」といった観点で前月末残高の月平均と比較してみます。
また季節変動を加味した異常値を発見するために前年同月や予算値と比較したり、会計システムから勘定科目別の推移グラフを見てみたりするのも有効です。

なお、PL科目の相手勘定は、現預金勘定や売掛金・買掛金といったBS科目であることがほとんどです。
従ってBS科目の残高チェックを終えていればかなり計上漏れや計上誤りは防げていますので、上記の様な方法で「数値の信憑性」や「計上科目の選定誤り」等を確認することを主眼にしていきます。

  • 計上科目の選定誤りや数値の信憑性を確認することを主眼にチェックする
  • グラフ等も駆使して勘定科目の推移を増減に着目してチェックする
  • 前期比較の帳票等で季節変動を加味して異常値のチェックをする

消費税課税区分のチェック

伝票入力時に消費税の課税区分を入力します。
通常はシステムのマスタ登録時に勘定科目・内訳科目ごとにデフォルトの課税区分を設定します。
ですからほとんどの仕訳は初期表示される課税区分に従って入力すれば問題ありません。

しかし勘定科目の分類で判断できない取引についての誤りや単純な入力ミス、仕訳訂正時の課税区分の修正忘れ等で課税区分の誤った仕訳も混入する可能性があります。
これらは一覧でチェックするのが効率的です。

勘定科目別・課税区分別一覧を画面表示させ「勘定科目-課税区分」が「1対1」なのか「1対n」なのかを意識しながら、必要に応じて勘定科目・課税区分ごとに計上された仕訳を「流し見」していきます。
「計上されるはずのない課税区分に数値がある勘定科目」があれば仕訳を見て修正していきます。
すべての修正が終わった時点で再度一覧表示して異常値が計上されていなければ完了です。

  • 勘定科目別・課税区分別一覧を画面でチェック
  • 勘定科目の各課税区分の発生可能性を意識して異常値の有無をチェック
  • 必要に応じて仕訳に遡り妥当性をチェック
  • 異常値があれば必要に応じて修正
  • 修正後に再度一覧を表示させて異常値がなければ完了

簿記だけで実務に入った時に一つのハードルとなるのが消費税です。
取引ごとに「これは課税、これは非課税」と覚えることも一つの方法ですが、仕組みを覚えれば所見の取引でも課税区分の判定ができるようになり1ステップ上の人材になることが出来ます。
消費税の計算構造は非常に単純です。
こまかな論点もありますが、まずは大枠を理解した上で課税の4要件限定列挙された非課税取引を覚えると大抵の取引は自力で判定可能となります。

2. 単体決算

勘定科目別・補助科目別等で異常値が無いかの点検等をした結果、試算表が確定できたら、あとはその数値を使って財務諸表を作成します。

財務諸表/計算書類の作成

よく「決算書」と呼ぶ書類は実は通称で法律で規定される書類の分類は以下の様になります。

財務諸表:金融商品取引法で規定されている書類

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 付属明細表
計算書類:会社法で規定されている書類

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • 個別注記表
  • 付属明細表

計算書類に「事業報告」と「附属明細書(計算書類・事業報告)」をまとめて計算書類等として「決算報告書」として会社に保存されたりします。

会計システムではこれらの帳票も設定をきちんと行えば自動で作成できてしまいます。
但し事業報告は試算表に現れない定性的な記載事項もありますので作文が必要となってきます。

社内手続き

社外への公表の準備として社内手続きをして経理部門が作成した決算書を「会社のもの」としていきます。
会社ごとに経営会議に諮ったりいろいろありますが法定の手続きもあります。

株主総会に提出するためには取締役会の承認決議を経る必要があります。

経理・財務責任者はこれらの社内手続きにおいて説明をしたり質疑を受けたりして対応することになります。
また監査役監査、監査法人の監査の対応もします。

3. 連結決算

連結決算とは、親会社が子会社等のグループ企業である関係会社の決算数値を合算して行う決算です。
上場企業は合算すべき関係会社が規定されています。

しかし上場していなくてもグループ企業を擁している会社は沢山あります。
グループ企業全体の財務状態や経営成績の把握が必要ですので、法定かどうかに関わらず連結決算が必要な場合もあります。

連結決算を行う場合には、単体決算の項目でお伝えした内容は連結決算まで行った後に同様の手続きが必要となります。

ここでは親会社への連結決算に必要な報告に関してお伝えします。

親会社への報告方法

大きく分けて数値の報告と定性的な情報の提供となりますが、数値の報告や定型的な定性報告は専用システムを利用していることがあります。
私はDivaSystemという連結決算用システムの利用経験があります。

会社によってはエクセルのひな形を用意して各社に提出要請をしている場合もあるかもしれません。

各種残高の報告

グループ企業共通の指定フォーマットにより試算表データから始まり主要勘定科目の内訳や増減明細等を報告します。

要求されている数値を単体決算作業で集計できるように勘定科目基準や集計方法を取り入れておくと効率的です。
キャッシュフロー計算書用のデータや税効果会計の集計結果等も報告します。

連結対象企業は義務付けられる項目が増えますので求められるスキルの範囲も広がります。

証憑の提出

定型的な報告は比較的数値のみの報告で済ますことも多いですが、「大規模の設備投資をした」とか「新規事業を開始した」等、規模の大きい臨時的な事象が発生した場合にはその詳細を説明するため、裏付け資料を確認してもらうために裏付け資料を提出することもあります。
「どういったものを提出をすると相手が取引を効率良く把握できるのか?」と言うことを日頃から考えて準備しておくことが大切になります。
また決算時に初めて報告する、といったことでなく普段から親会社の窓口となる担当者との良好なコミュニケーションを取っておき、連結報告に関する認識合わせをしておくことも経理担当者にとって重要な仕事と言えます。

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